敷金とはなにか?

賃貸住宅を借りる際に家賃の1~3ヶ月程度必要なことが多い「敷金」。
そもそも敷金とは、正確にはどういったお金なのでしょうか。

敷金は、法律で「賃料その他の賃貸借契約上の様々な債務を担保する目的で賃借人が貸借人に対して交付する停止条件付きの返済債務を伴う金銭※」と定められています。
民法619条及び判例

わかりやすく説明すると、賃貸物件の家主が家賃の滞納リスクや、人に貸すことで壊されたり汚されたりするリスクに対して補てん・保全するために事前に預かるお金です。
そのため、リスクが生じなかった場合、つまり『「通常に使用した場合」には返金される』お金、となります。

返金されなかった敷金は、借主が主要因で明らかに通常の使用では生じない汚れの清掃や破損箇所の補修等に使われます。

賃貸借契約上では「原状回復」をするという表現も多くのケースで見受けられます。敷金を返金してもらう上で、この「通常に使用した場合」と「原状回復」の解釈がとても重要になります。「返す・返さない」でトラブルが生じてしまうのも、この2つの言葉の解釈の違いです。

「通常の使用」でわかれる原状回復義務の内容

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原状回復とは

 

 

 

 

 

 

 

 

国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」という文書を定めています。
このガイドラインでは、「原状回復」と「通常の使用」を下記のように定義しています。

原状回復とは
「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」あり、その費用は賃借人、つまり物件を借りる側の負担としています。

通常の使用とは
一般的定義は困難であるため、次のような区分で、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしています。

A:賃借人が通常の住まい方、使い方をしていても、発生すると考えられるもの
B:賃借人の住まい方、使い方次第で発生したり、しなかったりすると考えられるもの(明らかに通常の使用などによる結果とは言えないもの)

この場合、B、および基本的にはAであるがその後の手入れ等賃借人の管理が悪く、損耗等が発生または拡大したと考えられるものには原状回復義務があるとしています。

つまり「原状回復」とは、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではなく、経年での劣化や明らかに賃借人だからこそ生じた損害でない場合は「通常の使用」であり、家主・貸主が負担するべきということです。

具体的には家具を設置したことによる床の凹みや、ポスターを貼ったことによるクロスの変色、タバコのヤニ、網戸の貼替えや次の貸借人募集のための全体クリーニングなども家主側の負担と定めています。

しかし、例えば畳にジュースをこぼすということ自体は通常の使用をしていればあって当然と考えられますが、こぼしたまま清掃しないために生じたカビやシミなど、その後の対処を怠った場合については借りている人の責任としています。
また、壁に釘やビスを打ったり、ペットが柱を引っ掻いたり、あらかじめ考えられていた照明器具ではない器具を設置したことによって生じた穴は、通常の使用と言えないものにあたると考えられ、敷金を用いて修復される内容となります。

ローカルルールが存在する敷金

ここまでは、法律上の話やガイドラインの観点で説明してきました。
注意すべき点は、ガイドラインが法律ではない、ということです。
法律的な制約がないため、異なる解釈で対応する家主・不動産業者も少なくありません。関東と関西とで微妙に敷金の扱い方や解釈が違うといったローカルルールも存在し、トラブルが多い一因と言えます。

例えば、関東では敷金の他に礼金という返金されないお金が必要になることがありますが、関西では礼金という言葉は使われない事が多く、敷金の一部が返済されない「敷引き」という慣習があります。

あたりまえのように、敷金は返済されるのが前提だと思って契約したら、実は敷引きでの契約だった!というような失敗がないように、これまでの自分の常識やガイドラインだけで判断をするのではなく、必ず賃貸契約の前に敷金の扱い方がどのようになっているかを確認する必要があります。

トラブルを避け、敷金を返してもらうために

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敷金を返してもらうために

 

 

 

 

 

 

 

 

原状回復と通常の使用の解釈は、あくまでもガイドラインであり、必ずしも家主や不動産業者がこの文書に沿った契約を提示するとは限りません。
逆に言えば、トラブルや考え方にズレがあるからこそそのトラブル回避のために生まれたガイドラインですので、不明確な表記がされているようであれば、契約前にしっかりと確認をするようにしましょう。

また、敷金0円で契約したは良いけれど、いざ明け渡しするとなったら借りた時点の状態に戻すという特約がついており、多額の原状回復費用を請求された!というケースも見受けられます。
契約に敷金や原状回復・通常の使用に関する特約などが付いていないかなどの確認も怠らないように注意してください。

居住中の使い方は、神経質になる必要はありませんが、可能な限り汚さない事・壊さない事がやはり一番です。しかし、ガイドラインにもあるように居住していれば汚れてしまうのは通常の使用の範囲内です。その汚した後の対処をしっかりしておくという事が最も重要になりますのでこまめに掃除しましょう。

また、明渡し時の部屋の印象、清潔感も重要です。
家主や不動産業者が部屋に入った瞬間に、思っていたより綺麗と思われるか、思っていたよりも汚いと思われるかで敷金の戻り方にも影響が出ると心得ましょう。
退去直前には自分で出来る範囲の掃除やクリーニングは念入りに。

最後はやはり人間関係と信頼関係

いくら国交省ガイドラインがあったり、賃貸借契約書があったとしても、敷金の取り扱いには10人いれば10人の解釈が存在します。

最後に頼りになるのはやはり信頼関係です。
お金を払っているとは言え、人様のものを借りているという意識は大切です。綺麗に使うということを心がけ、もし汚してしまった場合でも適切に対処をすれば、きっと家主や不動産業者とも信頼関係を築くことができます。
そうすれば、もし何かの行き違いが生じても、きっと大きなトラブルになることなく解決されていくでしょう。